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「サーカス / ジャグリング」への興味:AAPA『となりとのちがい vol.5』

5/18(金)~20(日)に北千住駅周辺の会場で行う
AAPA『となりとのちがい vol.5』の各ゲストの
「ジャンル」に興味を持った内容やきっかけを
それぞれ紹介してきました。
最後の今日は「サーカス/ジャグリング」です。

自分が「ジャグリング」という言葉をしっかり
知ったのは、現在は「ながめくらしつという
カンパニーで制作を行う奥村優子さんを通じて
AAPAの上本が、ジャグラーの宮野玲くん
紹介してもらったことがきっかけでした。

その後、『見えなくなるだけで消えない
という2013年のAAPAの作品で宮野くんと
共演することになり、初めてジャグリングの
道具に触れながら踊ることを経験しました。


この時は、今はなくなってしまった、横浜の
BankART NYK の1階ホールでの公演だったの
ですが、あらためてこうして映像で振り返ると
かなり劇場的な作品だったな・・思います。

そしてこの時は、北千住の団地の空きテナント
と出会い、スタジオのオープンに向けて準備を
開始した頃でもありました。

そして2013年7月にスタジオをオープンした後
ジャグラーの宮野玲・倉沢英治・関矢昌宏の
3人が「ジャグリング創作プロジェクト focus
として、クラスやクリエーションを行う活動が
スタジオで始まりました。

AAPAとしても、ジャグラーと創作をともにする
機会が広がり、「Theater Juggling Stream」
(2015) や「空転劇場 vol.5」(2016) といった
ジャグリングのイベントにも出演させてもらい
ジャグラーとの交流も広がっていきました。

彼らに出会うまで、ダンサーとして活動する
私が「ジャグリング」に興味をもつ機会は
ありませんでした。
そして彼らとの創作は、「物」に対する発想や
ジャグリングのテクニックから生み出される
「そんなことできるんだ?!」という驚きから、
たくさんの刺激を受けることになりました。

AAPAでも以前から、ペットボトル、紙、イス、
ビニール袋など、日常の物を使って踊ることは
よくありました。2011年に国内各地の劇場で
上演した『終わりの予兆』は、その典型的な
例と言える作品です。


そして2013年にジャグラーとの共演を初めて
経験した結果、その後のAAPAの作品では
ダンサーのみで構成された作品でも、物への
アプローチが大きく変わったなと感じます。

作品そのもののテイストの違いもありますが、
例えば、水を入れたグラスや棒を使って踊る
シーンがある『短い旅行記 2016』の映像を
あらためて見ると、そう感じます。


ダンサーとしてAAPAの作品で踊るときに、
物の重さを使ってからだに揺れをつくる
方法が広がったり、物の素材の違いから
新たなからだの動きを探るようになったのは、
ジャグリングからの影響があったと思います。

物を持ちながら動いていくことで、からだに
新たなイメージが積み重なっていくのを捉え、
からだに複雑さや変化を加えていくパートナー
として、物の「質感」を扱うことについて、
より技術的な側面からアプローチすることに
意識が向くようになりました。

そしてジャグラーの動きを見ているなかで、
物とからだの関係から観ている側に生まれる
スリル感、それに挑むジャグラーのからだに
現れる集中力の形に、新鮮さを感じました。

ジャグラーの志向性にもよるとは思いますが
時に、物を扱う人間自身の存在がなくなり、
物体が空間に描く軌道そのものの美しさを
ダイレクトに感じることもありました。

私は「からだ」を、とても機能的な存在と
捉えて「モノ」として考える志向があるので
そういう点で親和性を感じる、というのも
あったと思います。

そして、ジャグラーのなかにも様々な人が
いることを知れたことも、良かったです。
自分のダンスと近いなと感じる人もいれば
違うなと感じる人もいて、例えば演劇的だな
感じることもあれば、美術的だなと感じる
こともありました。そしてその多様な価値観に
ダンスとの親和性を感じることができた気がします。

結局は「モノ」を扱いながらも
最終的に何を見せたいのか(例えば「からだ」
を見せたいのか、「モノ」を見せたいのか、
「物語」をみせたいのか)という志向性の話
であって、ジャンルが違っても、そのなかで
共通性が見つかっていくものなんだと。

また、ジャグリングというジャンルがまだ
日本では歴史が短いからか、出会う人たちが
大学生~20代後半までの世代に固まっていて、
かつ男の子がほとんどで、今まで出会う機会が
あまりない人たちだったことも、新鮮でした。

ジャグリングにしてもダンスにしても、
それぞれ存在を知らないまま活動をするよりも
お互いの存在は感じながら、ゆるやかに交流が
生まれる関係にあれたら良いな、と思います。

ただ、AAPA『浮舟』を再創作した公演 (2016)
以降は、スタジオに関わりがあったジャグラー
就職や生活環境の変化などがあり、ともに
創作や企画をする機会がなくなっていきました。

今回、「サーカス / ジャグリング」のゲストで
参加してもらうNildaは、2年ほど前に日本に
来た際、ふらりとスタジオのクラスを受けに
来てくれたことがきっかけで知り合いました。

その後クラスに数回続けて参加してくれて
話をするなかで、彼がフランス人のサーカス
パフォーマーだということ、サーカス学校で
コンテンポラリーダンスを学んだ経験もあり
卒業後も様々なジャンルのワークショップに
参加していることを知りました。


そして今回、一か月ほど日本に滞在すると
Nildaから連絡があったことをきっかけに、
サーカス、ジャグリング、ダンス、武術など
様々なジャンルを横断してトレーニングを
重ねている彼の存在を通じて、しばらくの間
離れてしまった「ジャグリング」との接点を
再びつくれたら、と思いました。

+++++

スタジオでワークショップを行ってきた
「武術」「歌/声」「サーカス / ジャグリング」
「仮面」の各ジャンルからゲストを招き、
毎回、異なるゲストと会場の組み合わせで
上演する、AAPA『となりとのちがい vol.5』。

「サーカス / ジャグリング」のゲストの
Nildaが出演する回は、5/19(土) 13:40 と、
20(日) 15:20 開演の回です!
またNildaは、5/19(土)と20(日)の両日、
ワークショップも行います。(→ 詳細情報)

今回のように様々なジャンルのゲストを招く
企画を行う背景には、「ダンス」という言葉を
「からだを使ったパフォーマンス」に置き換え
新鮮な感覚に触れる機会を増やしたい、という
思いがあります。
ご興味・ご都合あいましたら、ぜひどうぞ!

AAPA『となりとのちがい vol.5』
▼チケットの購入はこちら↓
http://engeki.jp/pass/events/detail/419